釣り
   佐々木三知夫(秋田ふるさと塾主宰・秋田市在住)

 秋田富士鳥海山の八合目から日本海に沈む夕陽を眺める。太陽が水平線に沈む瞬間は深紅のラグビーボールのようになる。翌朝、山頂で太平洋側から登るご来光を拝み、背後の日本海には鳥海山の陰が三角形に写っていた。夕陽、ご来光、陰鳥海の三点セットを一度に見たのは十年前だが、以来、鳥海山には登っていない。今は鳥海の陰の所にある海、象潟沖に船を浮かべてキス、アジ、サバの三点セットを狙う。
某日、日曜日の午後。日本海は凪。浅瀬に小さな船を出す。餌はアオムシ。二本の竿を船縁に置く。キスは魚信(あたり)がほとんどない。竿がゴトゴト動くと上げる。波のある日のほうがキスが釣れるのだが。凪のこの日はそれでもジャンボキス一匹を含めて三十匹のキスが釣れた。アジは数匹。
夕方になって、風が吹いて波がでてきた。はるか沖の方にカモメが集まっている。鳥山だ。急いで船を出す。波間に鳥海山が聳え、夕陽に映えて美しい。
鳥山の下にはいわしを追って鯖がいるはずだ。サビキにして鉛を投げ込むとすぐにググッと強い引き。竿がしなる。鯖が面白いように次々とかかる。サバ読むわけではないが、船が鯖で足の踏み場もなくなった。
家に帰って、キス(鱚)は、開いてひと塩して一夜干しにする。それを冷凍して冬になったら、あぶったキスを肴に一杯飲る。
大漁の鯖は、ご近所に配ってもまだ余る。猫の手(口)を借りたいが、わが家の猫は魚嫌いときている。